11/16-18の3日間で行われた今年の卒業研究・中間発表はハイレベルでした。「その実験や計算にどんな意義があるのか? 社会的なニーズはあるのか?」という類の厳しい質問が出たからです。
「○○はどうやって計測したのか?」
「○○の計算はどうやって行ったのか?」
「『○○と考えた』と説明しているが、その根拠は何か?」
といった定番の質問に対して、答えられる学生もいる一方、沈黙してしまう学生も一部にはいます。学生の発表を審査する教員としては、学生の理解度が怪しそうな場合には、まず、定番の質問でジャブを入れることになります。
研究の目的・意義を問う質問は、先のような定番の質問に対する備えは十分だと感じられる場合に、次のステップとして発せられるものです。だから、目的・意義を問う質問が出たということは、ある一定のレベルに達していることの証(あかし)なのです。つまり、ハイレベル。
ある研究室では9月の段階で「発表スライドが完成しリハーサル(発表練習)を行っても中間発表の準備が完了したことにならない」と指導していました。質問に対する備えまでできて一人前ということです。中間発表の週に入ってからは、研究の目的・意義を問う質問が出た場合について具体的なディスカッションが学生と教員の間で行われていました。
では、この研究室では全員が目的・意義を問う質問にうまく答えられたのでしょうか。残念ながら、一部の学生はうまく答えられませんでした。教員としては、数カ月も前から学生指導の場でいろんなネタを学生に与えながら、その積み重ねにより理解の強化を図っているのですが、気付きがある学生と気付けない学生の違いはどうしてもあります。そこに至るまでの間に気付きがある学生は「学び」の繰り返しにより真の理解に達しているのでどんな質問にも答えられるのですが、それまでに気付きが少なかった学生にはちょっと無理。でも、そんな学生でも、中間発表で自分に足らないものを認識できたのなら、それこそが学びとなるでしょう。
最後に、真の理解に達していたから答えることができた事例を紹介して締めます。
ある卒研に対して「この手の実験は統計的処理が必要ではないのか、実験回数を10回とかに増やさないと説得力が足りないのではないか?」と質問がでました。研究対象の現象が複雑なので、再現性(同じ実験を何回か行った時に同じ結果になるのか?)が気になるのはごもっともな意見で、企業の開発現場ではこのような質問が出ることがあります 。「実験の状況だけではなくて、理論式を求めていって最終的にはその理論式をもって評価したい」と学生は回答。企業の開発現場でもこの手の質問にうまく答えられない人がいることを鑑みると、これは見事な回答です。そこに至るまでの学生の学び・成長の成果がいかんなく発揮されたといえるでしょう。