Topics2023/12/13

日本航空宇宙学会論文集に「ジェット旅客機基本空力設計の要諦」という論文が掲載されました。

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先週、日本航空宇宙学会論文集に「ジェット旅客機基本空力設計の要諦」という論文が掲載されました。

本論文ではボーイング787等の三面図から濡れ面積(外気に触れる航空機の表面積)を読み取った結果を元に航続性能を推定し、ボーイング社の公開データと比較しています。
比較の結果は、最大でも5%の誤差、機種によっては1~2%の誤差となっており、本論文の航続性能方法でボーイングの公開データに近い結果が得られます。
これにより、ボーイング777において-200と-300の胴体ストレッチの違いや、初期型とその後に出たER(LR)型の主翼の違いを的確に説明することが可能となります。

本論文の源流は、2021年の航空機設計の講義にさかのぼることができます。
2021年に中山が本学に着任し航空機設計の講義を担当することになった際に、それ以前の講義内容を一新し産業界の現場で行われているエンジニアリングに即した内容を目指しました。
初めて講義を行った2021年の段階では本論文と同じ完成度には至っていませんでしたが、内容的にはほぼ同じ内容を含んでいたのです。

2022年からは、4年生の卒業研究で本テーマを取り組むことで、さらなる飛躍となりました。
今春の卒業生である新浜君が昨年の航空宇宙学会西部支部講演会で途中成果を学会発表。
その時点で、エアラインでの実際の運航状況を反映するために山岸先生(今年9月末に退職)に相談したところ、当時日本航空に所属していた中野さんをご紹介いただきました。
中野さんから寄せられた情報を活用することで、冒頭に示した実機との誤差1~2%を実現する道が切り開かれました。

こうなると論文にまとめるためには複数の機種について濡れ面積を正確に見積もる必要が出てきます。
現4年生の小糸君は2021年に、内容が一新された航空機設計の講義を最初に受けた1期生で当時から787の濡れ面積を図り取っていました。
そこで、小糸君に787だけではなく777、747、767の濡れ面積を図り取ってもらいました。
このよう経緯から、本論文は、私(中山)と、4年生の小糸君、中野先生(4月に本学に着任)の3名の共同作業で作られたのです。

1999年に日本航空宇宙学会誌から論文集が独立して発刊されるようになって以降、本学の学生が査読付き論文の著者となったのは初めてのケースとなっています。
加えて、学生の卒業研究がほぼそのまま査読付き論文になっていること点も特筆すべき点です。