Topics2023/11/10

中間発表の宿題

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ワイヤロープを引っ張るための端末処理にワイヤークリップを使っているTS君の卒業研究、中間発表で「ワイヤークリップを使う方法が適当なのか? ほかにもっと良い方法があるかどうか調べたのか?」との質問が出て、うまく答えることができませんでした。調べたかというとノーなので、まあしょうがないところですが、要は最終発表に向けた宿題なので、それまでに片付ければよいのです。
中間発表の後、ワイヤーロープハンドブックという約千ページの専門書を見ると、ワイヤークリップを含め7種類の「端止め」方法が記載されています。ワイヤークリップも7種類に含まれている訳ですから、ワイヤークリップが直ちにダメということにはならない一方、他の6種類の中にもっと良い方法があるかもしれないというところが論点です。この宿題を同じ研究室の学生3人が集まってディスカッション、教員から「さあ、どうやって考えればよい?」
最初に出た意見はKT君の「それぞれの方式の長所と短所を比べればいいんじゃないの?」。実際によくある方法なので一理ありです。ただ、その直後にTY君から「他の誰かが似たような研究を行っているなら、その人がどんな方法を使っているかが参考になるのでは」。実は教員は先回りしていて東京大学による機械学会論文にある方法で端止め処理されたロープの写真が出ていることを知っていました。「いまの意見は、かなりいい意見」と話し始めて、東京大学の事例では合金止めという手法が使われているところまで話が進みます。
「じゃあ、我々も合金止めをやれば良いっていうこと?」と再度、教員から問題提起。この話の流れでは、KI君が「スケジュールとコストはどうなの?」。これも実務でよくある視点です。そうです、合金止めはコストが高いことが課題で、ワイヤークリップは1個百円というところが強みです。最初のKT君の意見に基づき、こういったことを整理した方が良いでしょう。

教員から学生を見ていると「経験がないからわからない」と自分に制約をはめてしまっていることが多いと感じるのですが、この日の学生同士のディスカッションは企業におけるほぼ実務レベルそのままでした。少ないながらも卒業研究という経験を通じて学生の中に制約を乗り越える自信が出来てきたということでしょうか。でも、ひょっとしたら経験の有無なんて実のところ関係ないのかもしれませんねえ。